
まずこの図の下の部分には、メディア・エクスプリモの4 つの
グループが位置づけられている。4つのグループの要は、このCREST研究の代表である須永剛司が所属する須永グループ(情報デザイン)で、科学技術とメディア社会のインタフェースとなる中央に位置している。
左側の科学技術の領域のなかで、より科学に近い地点に堀グループ(創造活動支援システム)が、デザインに近い技術領域として西村グループ(実世界指向インタフェースと社会ネットワーク)が展開している。一方、メディア社会の側に内在するかたちで水越グループ(ソシオ・メディア論)が配置されている。このように文系、理系が、美系に協力、協働するかたちでメディア・エクスプリモは成り立っている。
さて、こうした4つのグループがいかに協働するか、その仕組みと働きについては図2 を見ていただくとして、この図の上半分では、4グループが一帯となって取り組むメディア・エクスプリモは、「批判的メディア実践」という枠組みを与えられたワークショップやイベントなどの実践研究の手法を用いることで、「情報があふれかえる社会」から「表現が編みあがる社会」への変革のための社会貢献をしていくことを目指していることが示されている。

情報を意味するinformation。その動詞であるinform は、inform、つまり「鋳型のようなものにものごとを入れてかたちを与えること」を意味している。ここから少し想像を働かせてみたい。in-form に対置する言葉としてde-formというのがある。現在の英語では「ゆがめられた」などの意味だが、いわゆるデフォルメをも意味する。与えられたかたちのなかで「定まったものごとを崩していく、解体していく」という意味合いであろう。
情報デザイン(須永グループ)は、ものごとをin-formしていく営みだ。さまざまな技術要素を組みあわせ、人々が日常生活でおこなうコミュニケーションや行為にとって意味があり、役に立つような造形をおこなう。ここでは、市民のメディア表現というのがin-formの対象となる。
一方、近年のメディア論は、そうした情報デザインが施された結果、当たり前のようにとらえられているメディアや表現のかたちを再び異化していく、自明性を突き崩していくことを一つの大きな目的として展開されてきた。すなわちソシオ・メディア論(水越グループ)の役割は、社会のなかでのメディアと表現のde-form のありようを明らかにしていくことにある。
さて、メディア論などで異化された市民のメディア表現のありようを、コンピュータの力によってデコンストラクトすること。これが知識支援システムの領域(堀グループ)の関心事だ。すなわち、表現を記号的に分解しばらばらにすること(液状化)、それらを組み合わせもう一度表現を形づくること(結晶化)を自在に繰り返すなかで、各要素と関係性の相関を把握し、操作可能にしていくことを目指す。
知識支援システムによって操作可能にされたメディアと表現を、もう一度現実的に組み立てていく役割は、実世界指向インタフェースと社会ネットワークの工学的研究(西村グループ)が担うことになる。情報デザインと密接に協働し合いながら、モノやサービスとしての技術システムと、ワークショップや学習、遊びとしての文化プログラムにかたちを与える、informすることになる。
このような循環性のなかに4 グループが位置づけられている。それではin-formとde-form の循環、メディア社会と科学技術の相関のなかで、4 グループが連動して研究開発を進めるためのエンジンはなにか。それはform をめぐるもう一つの言葉、per-form、演じること、演奏すること、さらには表現することである。私たちはこのper-formの典型として、ワークショップを位置づけている。
ワークショップとは、一定のルールに従ってモノを作ったり、演じたり表現することを通して、参加者が深く学び合うような活動のことだ。私たちはワークショップを、学習や表現だけを目的とせず、ファシリテーターが意義深い質的データを得るような研究上の意味合いを持ち、さらには参加者がやがて研究的な観点を学び、地域や共同体に自律的なワークショップを展開しながら、市民のメディア表現を持続的に展開していくための方法論として発展させようとしている。その発展系を実践的であると同時に批判的な活動という意味合いを込めて、批判的メディア実践と呼んでいる。
このような連動のなかで、4 グループは必然的に2 つのサブグループに分かれて研究を展開してきた。in-form を最大の関心事とする須永&西村グループと、de-form に注目してアプローチする水越&堀グループである。いうまでもなくこの2 つのサブグループはたがいに密接に関わり合って研究を展開している。