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関連する基本用語解説

基本概念についての辞書的な解説

 水越伸「メディアと社会」『現代用語の基礎知識2007』自由国民社、2007年、pp.794-803、より抜粋

■メディア(media)

 ものごととものごとの間での媒介、およびそれらを果たす事物のこと。情報の伝達手段と、感情や思想の共有手段という二つの意味を併せ持つ。現代は前者の意味が卓越し、メディアにはより速く、より安価に、いつでもどこでも情報伝達できることが求められる。その典型がケータイ。しかし伝統的な地域新聞からオンライン共同体でのおしゃべりにいたるまで、感情や思想の共有手段としての働きも連綿と続いている。
 メディアのありようは、これら二つの意味合いがより合わさりながら、技術の発達だけではなく、さまざまな社会的要因がかかわりあいながら形づくられる。大きな機構体となったメディアをマスメディア、メディアの研究をメディア論という。

◆コミュニケーション(communication)
 人と人が意思を疎通する営みのこと。この営みは、情報を伝達する活動としてだけとらえられがちだが、感情や思想を共有する活動としての意味もあり、両者がより合わさるようにして成り立っている。コミュニケーションを成り立たせる媒介がメディア。私たちは仕事、恋愛、交渉などさまざまなコミュニケーションに応じて、いろいろなメディアを使い分けて生活している。そのメディアが肥大化して機構体となり、大量情報が一方向的にまき散らされるのがマス・コミュニケーション(→「マスコミ」)。会話、対話とは、言語というメディアを介したコミュニケーションのことだが、身振りや表情、服装や空間を介した非言語的なコミュニケーションが持つ意味も大きい。

◆マスコミ/マスメディア(mass media)
 マス・コミュニケーション(mass communication)とは、大量の情報が一方向的に一般大衆に向けてまき散らされる社会現象をさす。マスメディアとはマス・コミュニケーション現象を仕掛ける機構体。新聞、テレビなどは高度情報技術を駆使する、複雑に組織された専門家集団であり、司法、立法、行政と並ぶ第4の権力とよばれる。
 マス・コミュニケーションはマスコミと省略されることが多いが、省略されると意味が変わり、マスメディアと同じ意味で用いられることには注意を要する。マスコミに対してミニコミ、マスメディアに対してパーソナル・メディアなどの用語があるが、多メディア時代にその概念区分はあいまいになりつつある。

◆ジャーナリズム(journalism)
大量に定期刊行される印刷メディアがジャーナル。もともとは日々の記録を意味した。ジャーナリズムは17世紀以降、新聞が複雑な機構体に発展して情報の生産と流通を行い、市民社会に大きな影響力を持つに至る過程で職業的に鍛え上げた矜持、思想のこと。さらにマスメディアが時事問題の報道、解説、論評を行い、世論形成を促す活動をも意味するようになった。マスメディア・ジャーナリズムの衰退がさけばれて久しい。一方で地域社会やオンライン上に新たなメディア表現者が出現し、ジャーナリズムに覚醒しつつある。新しい時代のメディア環境に応じたジャーナリズムの展開が切望される。

◆送り手/受け手
 コミュニケーションには、メッセージの送り手と受け手がいる。送り手と受け手は、役割を交代しながら対話することで、ノイズを減らし、より円滑なコミュニケーションができるようになる。20世紀半ばのマス・コミュニケーション研究者たちはそのような理想を語ったが、その後現実には、送り手は専門家集団としてのマスメディア機構体に、受け手はメッセージの消費者としての大衆的国民へと固定され、分離されていった。
 グローバル化、デジタル化の進展は、送り手と受け手という固定的役割をよくも悪くも混沌とさせている。一方では巨大メディア資本が、他方ではメディア表現者が現れつつある。

◆ステレオタイプ(stereotype)
 ある事柄に対して、特定の社会集団が抱いている固定的で歪んだイメージのこと。アメリカのジャーナリスト、ウォルター・リップマンの造語。「日本人男性は背が低く眼鏡をかけている」「関西人は派手で、がめつく、明るい性格」などはその典型。私たちは誰かに会う前から、その人の属性に関する画一的なイメージの枠組みのなかでその人をとらえ、評価しがちである。
 ステレオタイプは、ある社会集団が内と外を区分けし、自らにとって都合のよい認識や観念を取捨選択して体系化することで生まれるが、その多くはマスメディアによって生産、流通、組織されている。メディア・リテラシーの目的のひとつは、人々が無意識のうちに享受し、荷担しているステレオタイプを意識し、批判的に組み替えていくことにある。

◆メディア論(media studies)
 コミュニケーションを媒介するメディアに着目した人文社会科学的な知の領域。20世紀以降、マスコミ論、記号論、技術史、カルチュラル・スタディーズなどの領域で断片的に検討されていた知見が、特に1990年代以降、ひとつの知的まとまりを持つようになってきた。
 メディアは単に情報を伝達するだけの透明な手段ではなく、情報技術と社会の絶え間ない交渉のなかで歴史的に形成され、人間の知覚や経験、世界認識を枠づける存在である。またメディアの送り手と受け手は情報をめぐって多元的に駆け引きをしつつ、メディア文化を生み出している。こうした知見が国家、人種、ジェンダー、都市などとのかかわりで探求される。メディア・リテラシーやパブリック・アクセスは、メディア論の実践的活動としてかかわりが強い。

◆メディア・リテラシー(media literacy)
 情報社会でメディアを介したコミュニケーションを自律的に展開する営み、およびそれを支える術や素養のこと。メディア教育とほぼ同義で、中国語では媒体素養(教育)。
 かつては低俗でステレオタイプに満ちたテレビを批判的に読み解くために青少年に必要な能力などとして喧伝されたが、今ではテレビというメディア、青少年という世代に限られるものではなく、すべての人々がネットやケータイを含む多様なメディアに関して自律的でしたたかであるために必要なコミュニケーション活動ととらえられている。メディアの技術的活用、批判的受容、そして能動的表現という3要素のバランスが肝要。
 北米、北欧などが進んでいるが、日本でも教育実践が進められ、パブリック・アクセスと連動するなどして展開しつつある。

◆市民メディア(citizen media)
 一般市民が簡便なデジタル機器を活用し、大学や学校、サークル、地域のNPOなどを拠点に展開するメディア表現活動のこと。ケーブルテレビのパブリック・アクセスからインターネット放送、携帯電話のサービス、電子掲示板まで形態はさまざまであり、明確な政治的志向を持つものから地域おこしやメディア・リテラシーの育成を目指すものまで目的も多様である。プロがカバーできない地域情報や専門情報を追求したり、オルタナティブな言論の場や住民の生き甲斐を満たす営みとして期待を集めている。近年はローカル民放局や地方新聞社などが理解を示し、連携を図りながら地域メディアを活性化させようとする動きもある。

◆UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)
 映像サイト、ブログ、SNSやポッドキャスティングなどで、従来メディアの利用者だった人々が近年、送り手として盛んに生み出しつつある情報コンテンツのこと。コンテンツ生産と消費について、従来のマスメディア型、情報産業型の枠組みではとらえられない、新しい図式が生まれつつあることの象徴。コンテンツ産業が喧伝されるなか、ビジネス領域では新市場、新サービスとしてとらえられているが、メディア論からすれば、メディア表現者と市民メディアの台頭といえる。「ユーザー」と「市民」という言葉の違いは大きく、ユーザーは産業システムに隷属せざるを得ない概念であることも指摘されている。