調査期間:2007年8月29日(水)~9月5日(水)
調査者:須永剛司、 敦賀雄大、西村拓一、沼晃介、繁田智行(合流)(あいうえお順)
報告日:2007年9月11日(火)
8/30 (Thu) ■Professor Winograd at Stanford University
8/31(Fri) ■d.school, ■Google and ■Bill Moggridge at IDEO
9/1(Sat) break
9/2(Sun) ■Lynn Shade at Hunter's Point
9/3(Mon) Labor day
9/4(Tue) ■Joe Lambert at Center for Digital Story Telling
Person: Professor Terry Winograd
Institute: Computer Science Department, Stanford University
Place: Stanford, California
Date: 8/30(Thu) 13:30-15:30
Meeting title: Generating "Consensual Domain" and its social and historical aspects as design issues
デザイン課題としての「共感的領域」の生成とその社会的歴史的側面を議論。ウィノグラド先生は「共感的領域」を「motivation」という言葉で説明。
Professor Winogradは、コンピュータのデザインにかかわるにHuman-Computer Interaction (HCI)という分野を創立した学者。
最初にわれわれ訪問メンバーが「media exprimo研究」の概要を紹介、先生からコメントをいただきながら議論をおこなった。
【アドバイス、media exprimo に向けた課題など】
1. 技術システムと文化プログラムの両輪で研究することは大事だ。また、ワークショップ実践をともなって研究をすすめているのはいい。そこでは、学際研究が不可欠。自分たちも、技術とデザインそして文化人類学等の人間社会科学が融合するかたちが研究組織をつくっている。
• 研究室では異分野融合体制で、海外(たとえばミャンマー)、あるいは地域の病院や行政など実コミュニティと連携している。
1. ワークショップの組立てとして「表現の制作」と「そのふり返り」のカップリングを考えているという発表に対して。それぞれの場面で、表現物のアップロードや振返りながらのタグ付けなど、ワークショップ参加者に負担がかかる作業が要求される。そこで大事なのが参加者が表現したくなる「Motivation」のデザインだ。それが「文化プログラム」として提供されるといい。
2. 莫大なデータからどんな情報をどのように見ることができると、どのような再構成表現ができると、そこに表現者の新しい発見、喜び、表現技術向上、そして創造になるか、が課題だ。特に、表現物を扱うためにはテキストだけでなく画像の検索が鍵となるだろう。
3. 放送ジャーナリズムとネットの世界は一体化していく。そこにも異分野の共同という難しい問題が待っている。
【ふり返り】
1. 情報技術・情報デザイン・メディア社会論が連携するわれわれの研究は、世界標準型といえる。そこに、多様な分野が融合するためのさまざまな研究方法が必要で、そのやり方の考案もまたわれわれの重要な研究課題となるはずだ。
• exprimo研究の内容は興味深いが、サーベイによる従来研究との比較が言及されていない。それなので、本プロジェクトの学問研究としての位置づけを伝えられていない。世界に発信するためには位置づけを明確にわかりやすく伝える努力が必要。
• 世界に通用する技術システム研究はあるはずだが、文化プログラム研究は日本を射程にした研究議論となるのだろうか。
1. 文化プログラム研究として、既存の表現ワークショップ実践のサーベイが必要。ワークショップそのものから考えるより、どのようなコミュニティでどのようなワークショップがどのような意味をもって行われるかを考えることが重要。

Person: Charlotte Burgess-Auburn
Institute: Institute of Design at Stanford "d.school", Stanford University
Place: Stanford, California
Date: 8/31(Fri) 9:30-11:00
Meeting title: Design thinking and multidisciplinary research and prototyping
d.school のプログラムマネージメントをしている女性、Charlotte Burgess-Auburnと面談。
デザインの思考法と学際的研究とプロトタイピングについてお話をうかがった。
創造的な空間とそこにメンバーが集ること、それが最重要ポイントだと力説。「d.school」は通称で、正式には「Hasso Plattner Institute of Design」。
【アドバイス、media exprimo構築に向けた課題など】
1. 「d.school」の中核概念は「design thinking」と「innovation」の教育と研究。2006年にスタートした大学院プログラム。スタンフォード大学のさまざまな学問分野に籍をおく大学院生たちが学べる場所。学生が帰属する研究科の単位を出すが、学位は出してない。
2. プログラム展開の空間は写真のとおりかなり創造的、多摩美大のスタジオと同様の雰囲気をもっている。CRESTでもプロジェクト専用の部屋をつくり、プロジェクトにかかわるさまざまな活動を見えるようにすること、そこで共同の作業ができるようにするといいよ。
3. 学際性がプログラムの基本構造。現在は、「Technology・Business・Human Value」の3分野を融合させ、それらを融合させるスキルと知識として「Design」を置いている。それぞれの分野では「Feasibility・Valuability・Desirability」の探求をしている。
【ふり返り】
1. 上野毛のCREST研究室を4グループが集れる共同活動の場にすることも考えてみたい。
2. exprimo でつくるプラットフォームの利用は、テーマをもったグループの表現活動から徐々に、コミュニティに、そして社会の表現活動に広がっていくという段階の組み立てを考えるべきか。
• 情報テクノロジーが人間の活動にフィットした状態で提供される事が大事。
• 藤沢と武蔵大でのワークショップの組み立てでは、どんなアクティビティを起こしたいのかを先ず描いてみる。そこにどんな技術が必要なのかを考えてく順序が大事。
• それぞれのワークショップで、それぞれで使う技術のレベルをしっかり考慮すること。技術システムと文化プログラムの関係性を客観的に把握していきたい。

Person: Hideya Kawahara
Institute: Google
Place: Mountain View, California
Date: 8/31(Fri) 11:00-13:00
Meeting title: Company visit
松尾さんの紹介でGoogle社にHideya Kawahara氏を訪ね、社内見学とランチミーティングを行った。
Kawaharaさんは検索技術を担当している方。紹介されたのは、Google社の視座、仕事環境、仕事のし方など
「知的生産性の向上」がGoogleのキーワード。
【アドバイス、media exprimo構築に向けた課題など】
1. ランチミーティングで exprimo研究を紹介。地域に起きている具体的な表現活動をネットで集積するテーマに興味をもたれた。
2. 創造性と知的生産性を高めるためには、仕事のいい環境を作る事。そこに共通しているのは、どうも、入り口近くに、遊び心をくすぐる品々の展示と、キッチンと食べ物があることらしい。一緒に食事をする事が高い知的関係を人々の間に生むようだ。もうひとつは、業務に付帯して生じる作業、たとえばパソコンの修理などの負担を低減する仕掛けづくりである。
• 社員に良い環境で仕事をしてもらうための大道具小道具。ランチ前におこなったツアーでさまざまな仕掛けをみた。建物の外には、カフェテリアのテラス、サンドバレーボールのコートがつくる、大学のキャンパスのような楽しげな雰囲気。建物中には、検索語のリアルタイム表示、世界の統計を視覚化したコンテンツのディスプレイ、入り口上に成層圏を探索したロケット(本物らしい)、子供の遊び場(社員の家族用だが、そこで大人のミーティングもやっているとのこと)、個室のない大部屋(これは日本人には目新しくない)、飲み物やお菓子のバー(無料)、「Tech Stop」と名付けられた写真のパソコン修理ブース(24時間の修理をやっているところもあり)、クリーニングの箱などなど。
1. 自分の仕事の20パーセントは所属するチームの業務をやらない。他のことをやらなければならない時間をもつ。そこでは、新しいプロジェクトを立ち上げることなど好きな事をやっている。上司に却下された内容を、仲間を集めてやってみる時間なんだ、と説明された。アウトプトを求められている。これも結構きびしい仕事のかたちだと感じた。
Person: Bill Moggridge
Institute: IDEO Palo Alto,
Date: 8/31(Fri) 15:00-17:30
Meeting title: Prototyping methods for the designing of place for communication on the network
IDEOは世界的なデザインコンサルティングを行っている事務所。デザインとエンジニアリング、そこにビジネスを融合させたコンサルテーションが特徴。
IDEOの創設者のひとりであるBill Moggridge氏と面談。
Exprimo研究を紹介し、その後社内を見学。
複数の分野がコラボレーションするという観点からも、プロジェクトが行われている空間づくりや活動の進め方は興味深かった。
【アドバイス、media exprimo構築に向けた課題など】
1. 学際研究プロジェクトを展開するためには、「Tacit Knowing(暗黙値)」の尊重が大事。「氷山」をたとえに説明された。海面に出ているのが理論(学問)、海面下にあるのが暗黙知。その暗黙知を思い切り使って、いいプロダクトが作られているはず。(p.650) 「氷山のモデル」と勝手に名付ける。
2. 本当にユーザーが使って面白いと思えるものをまず作ること。それから、そのうまくいった産物についてのセオリーを、つまり氷山の見えるところを作るという順番でやるといい。(p.730)
3. たくさん失敗すること、そうすると先が見えてくる。
Fail frequently, See sooner。
4. ユーザーの日常生活を Observation して問題を抽出することが最良の方法。われわれの仕事にたとえれば、既存のワークショップを俯瞰し、注目する表現ワークショップを Observation すること。そこから問題点、良い点、ワークショップのモデルを抽出する事ができる。
5. 個人の部屋を少なくし、プロジェクトの部屋を作る。プロジェクトで生まれたものが部屋に残っている、提示されている事でデザインナーのサブコンシャスを誘発する。
(参照:Bill Moggridge "Designing Interactions" MIT press, 2007)
Person: Lynn Shade
Institute: Private artist, Design school student
Place: Hunter's Point, San Francisco, California
Date: 9/2(San) 10:00-16:00
Meeting title: Emerging places for People's Expressions and the community construction
表現をしている市民であるLynn Shadeさんと面談。
ShadeさんはもとApple社のヒューマンインタフェースデザイナー。
彼女の創作の現場Hunter's Pointを訪問。そこは複数の古い建物をアトリエとして利用する芸術活動がおこなわれている、海軍の跡地。Shadeさんは、約1年前から開発の波で縮小されつつある現地の環境悪化のため、そこでの制作を中断していた。
【アドバイス、media exprimo構築に向けた課題など】
1. Shadeさんは1997年に海軍跡地であるHunter's Pointのアトリエを借り、現在10年目。昨年から跡地の再開発とともにはじまった環境悪化(アスベストや放射能などの環境汚染問題)にともない、あまりアトリエを利用してない。
2. 現在、Hunter's Pointniには、200人のアーティストがスタジを借りて活動している。そのうち3人がアーティストとして自立している。ほとんどのアーティストは、他の仕事をしながら表現活動を続けている。
• 最初の5年間が、韓国人アーティストのリーダーが全体をとりまとめ、アーティスト同士の交流もあり、活性化していた。その後、リーダーの高齢化(90歳)にともない、コミュニティが失われている。そのため、再開発を行っている市との交渉などに障害がでている。
1. 共同的な空間で表現活動することは、隣の部屋のアーティストの活動を感じることによって、自己の表現のモチベーションを得ることができるという意義がある。
【振り返り】
1. Hunter's Pointのアトリエを利用している人々の多くは、プロのアーティストを目指しているようであった。exprimo研究において「市民の表現者たち」を具体的に描くことが大事。
• exprimoをHunter's Pointのアーティストコミュニティの場に置くことを想定してみると次のようなニーズがあるのではないか?
• 作品発表の場・コミュニティ運営を支援できる可能性・周りの表現者の活動を感じられる機能
1. 制作プロセスを公開することが、表現者同士のモチベーションを高めるかも知れない。
2. explimoでは2つ課題を扱っている。ひとつはコンテンツとなる表現物そのもの。表現物において芸術と限界芸術が議論される。もうひとつは、一般の人々が利用する道具に関する議論だ。それは表現物を入れる器についてである。
3. exprimoをとおして 人々の表現の循環が起こること。その循環によって、市民の表現が市民の芸術になっていくプロセスを生み出すことが、われわれのねらい。

Person: Joe Lambert, Executive Director
Institute: Center for Digital Story Telling
Place: Berkeley, California
Date: 9/4(Tue) 11:30-13:00
Meeting title: Activities of the center and Digital Story Telling as people’s expression
【ふり返り】
1. Center for Digital story telling は exprimo の仮想クライアントになりうる組織とみた。
2. われわれは道具をつくる、彼らは道具を使うパートナーとなりうる。
3. 短期間でも彼らのワークショップに参加してみることは重要かも。
4. Digital Storytelling では「台本」が作られているので(英国BBCの活動と同様に)、台本のテキストは、タギングのための解析可能な素材として考えられる(動画表現の扱いは難しいが)。
http://members.shaw.ca/dbrear/dst.html
http://storiesforchange.net/
http://www.silencespeaks.org/
http://www.storymapping.org/
http://murmurtoronto.ca/
http://www.proseed.co.jp/