調査期間:2007年3月14日(水)~3月16日(金)
調査者:小川明子、小早川真衣子、繁田智行、須永公清、西村拓一、長谷川一、松井貴子(あいうえお順)
報告日:2007年4月12日(木)
【日時】2007年3月14日(水)15:00~17:00
【面談相手】Mr.Paul Gerhardt, Project Director
【概要】Digital Divideを解消しMedia Literacyを高める目的のパイロットプロジェクトとして2005年6月から昨年10月まで18ヶ月間運営した。現在はBBC TrustによるPublic Value Test待ちで2008年度後半には本格稼動を期待。
アーカイブ対象は、自然、歴史など著作権交渉の少ない500本近いClips、Full Programmes、Audio Tracks、Images。
編集ソフトも提供し、イギリス国内で約10万会員登録、約50万ダウンロードの実績を得た。
当初反対していたITN Source(世界最大と謳う動画提供サイト)やGetty Images(静止画、動画提供サイト。日本向けサイトもあり)などのコンテンツ流通業界からも前向きな評価を得たことは今後の評価に好影響となろう。
【感想、media exprimo構築に向けた課題など】
日本ではどのような動きとなっているのか、主要放送局での試みを調査したい。米国ではAmericas Archive(URL不明)が、豪州ではNational Film & Sound Archives (http://www.nfsa.afc.gov.au/screensound/screenso.nsf)が始まった由。
著作権について、CC(Creative Commons)は個人の著作物向けであり、BBCとしては「Creative Archive License Group」を形成したとのコメントがあった。これの意味するところ、media exprimoでのあるべき姿を 検討したい。
http://creativearchive.bbc.co.uk/archives/creative_archive_licence_group/
番組のメタデータ設計についてはDublin Core Metadata Initiativeが参考になるであろうとのコメントあり(やや自信がない情報)。
筑波大の杉本教授がDCMIのBoard of Trusteesの一人であるので、media exprimoの作品メタデータ設計についてのご意見を伺う機会を持ちたい。
Askeさんから、作品メタデータとして、ITU(International Telecommunication Union)のFG(Focus Group)の一つであるIPTV (Internet Protocol TV) FGが策定中の標準化案が media exprimo でも使えるかもしれないとの指摘をいただいたので、同FGで活動中のNTTのKawamori さんとも打合せの機会を持ちたい。
アーカイブ映像をPCにダウンロードすることなく編集できるソフトも提供されているようだ。media exprimoでも同様の機能を持てるか検討したい。
【日時】2007年3月15日(木)11:00~12:00
【面談相手】Ms.Victoria Rodgers, Curator (?)
【概要】旅行者向けInformation Centerと同じビルに同居する小さな博物館。
現在は、右の写真のように、市民の「家族・個人史」をパネルに仕立て展示中(英国では家族の歴史を調べ表現することが流行っている由)。
会場には「My Story」と書かれた葉書大の物語り用カードが用意されており、訪問者が自由に表現し博物館に提出できるようになっている(提出されたカードの中から適当なものを選び提出者を囲んでのパネル作りへと進むとのこと)。
【感想、media exprimo構築に向けた課題など】
ただモノを設置するのではなく、社会史と結びつけて展示していく、さらに個人、祖先の記憶と結び付けていくという方法が、英国では70年代以降主流になってきたとのことでした。
この点、日本の博物館はまだまだモノの設置が多いように思われますが、今後、博物館が入場者をどう集めていくのかという際に、こうしたストーリーテリングのようなやりかたがある種の呼び水になるのかもしれないと思いました。もちろん、それほど簡単ではないでしょうが。
ただ、こうした流れは、media exprimoが今後、博物館や美術館と提携していく際の口上として使えるような気がした。
葉書大のカードを会場に置き、自由に物語りを記入してもらうというアイデアは日本でも使えそう。また、記入したカードを誰もが見える透明なケースに差し込む方法は、訪問者を書きたくなる気持ちにされる仕掛け。
「家族・個人史を語る」ということは「繋がりを探す」行為に見えた。日本では、地域、職業や関心対象などが「繋がり」の事例と思う。
【日時】2007年3月15日(木)14:00~16:00
【面談相手】Mr.Gareth Morlais, Project Producer
【概要】Capture Wales推進母体として2001年以降各地でワークショップを実施してきた(現時点ではBBCの予算削減により少々下火の様子)。
ワークショップは4日間。初日はスクリプトを書いて参加者同士が共有し、2日目はプロの助けを借りて推敲、3日目は編集ソフトを使って約2分間の作品として編集、4日目午前中に完成させ夕方から家族などを招いての上映パーティの形式。
ただワークショップ参加者が2作目を制作するケースは少なく、ワークショップを2日間に短縮すること、携帯電話を利用すること、絵コンテを使った方法などを模索中。
編集ソフトとしてPremier Version 6.5を利用(マニュアル、指導者、使用機器などの継続性を考慮し、このバージョンで凍結している由)。
【感想、media exprimo構築に向けた課題など】
Capture Walesは写真家であるMeadows教授、コミュニティ演劇出身で文章の専門家であるJilly Adams(?)、コミュニティとのパイプ役や資金調達を担当したKarenとBBC WalesのGarethの個性溢れるスタッフが作り上げたものと理解した。日本的なStorytellingはどのようなものになるのか、その立ち上げのためにはどのような資質を持った人々が集まるのか、大いなる課題。
現在Walesで活動中のStorytelling組織は26で、BBC幹部が当初期待した数とは桁違いに少ない(2600と期待?)。簡単ではないであろうが、TrainerやFacilitatorを如何に育てるかが課題。
Meadows教授からも指摘があったが、技術の進歩に伴い過去のソフトやコンテンツが見えなくなったり使えなくなることを防ぐために、ソフトの種類とバージョンを限定しているとのこと。動画ファイル形式としてRealPlayer用のRealMedia形式を採用しているのも使いにくい。media exprimoでも重要な課題。
携帯電話の実験、手書きの絵を使う実験など、いろいろな手法をいろいろなデバイスで試しているという点に、表現を支援する姿勢を強く感じた。media exprimoでも参考にしたい。
なお、携帯電話やデジカメの普及率には地域や年齢格差があるので、利用に際しては十分な検討が必要と感じた。
StorytellingにおいてはScript(文章による表現)を如何に推敲するかに重点が置かれており、民放連のメディアリテラシー実践プロジェクトが撮影・編集技術を中心に据えたのとは軸足の置き方が異なるとの印象。
【日時】2007年3月16日(金)9:30~12:00
【面談相手】Dr.Daniei Meadows, Professor, Cardiff Univ.
【概要】写真家(50台前半)。70年代のバスを利用した撮影旅行での撮影対象の当時と現在とを対比した著書「The Bus」あり。94年からは大学でジャーナリスト向けにPhotographyを教える。
2000年に体験した米国西海岸でのDigital Story-tellingに触発され、2001年からBBCのプロジェクトであるCapture Walesを企画、推進。
何故Digital Storytellingなのかと聞いたら、「TV番組がくだらないから」との答え。
Digital Storytellingではスクリプトが重要とのお考え。旅の物語をダラダラと書いても面白くない、旅の一こまを具体的に書き出すことが重要と強調していた。
【感想、media exprimo構築に向けた課題など】
米国流のStorytellingは、セラピー中心、放送を前提としていない、感情に訴える手法が多い、WSの参加者間で競争させる運営(competitive nature)と、Meadows教授から見ると馴染めないようだ。
日本でのDigital Storytellingはどうあるべきなのか。
世界中のStoryを集めて俯瞰できたら面白いと思ったが、Capture Walesの作品はどうしてこう難解なのだろうか。言語の問題ではないようだ。このような作品は日本語化しても理解してもらいにくいのではないか。 http://www.bbc.co.uk/wales/capturewales/background/paul-cabuts.shtml
Scriptはこちら。 http://www.bbc.co.uk/wales/capturewales/transcripts/paul-cabuts.shtml
即ち、media exprimoをグローバルに展開するといっても簡単ではない部分もあるとの印象。
media exprimoの対象をグローバルに広げる場合には、他言語で作られた作品の意味を正確に伝えられるための工夫が必要。
ワークショップ参加者は偏らないように選定しているとのことだが、どうして「大人」の作品が多いのだろう(あるいは大人に見えるのだろうか)。日本でのワークショップ設計の参考になるかもしれない。
【日時】2007年3月16日(金)14:00~16:00
【面談相手】Ms.Kate Studwick, Senior Arts Development Officer
【概要】Caerphilly郡のBreaking Barriersと呼ばれるDigital Storytelling組織の推進役であるKateはCapture Walesワークショップ参加者の中から育った云わば「2世代目」。
Breaking Barriersは4名の担当者で運営。
Caerphilly郡の情報化課題「Digital Inclusion」のためにDigital Storytellingが必要との認識。そのために10数件のプロジェクトを立ち上げ、様々な分野でのDigital Storytellingを推進中。
また「Levels of Engagement」なる16段階の表でプロジェクトの発展段階を計っている。
WalesでのDigital Storytellingを理解するにはCommunity Artの理解が必要。結果である作品そのものよりも作品の制作過程を重視する考え方で、Community Buildingも目的の一つのようだ。
【感想、media exprimo構築に向けた課題など】
対応してくれたKateは情熱溢れる宣教師のような仁。このようなスタッフの存在抜きでは、(英国的)Storytellingはなり立たないのであろう。Media exprimoではどのような体制とするのか大きな課題。
County首長も含めた推進体制は立派。ドイツの姉妹都市とも「International Project」を通して活動している由。media exprimoの利用者拡大に向けては行政との結びつきが必要と思われる。
地域の問題を俯瞰して捉え、Digital Storytellingの効果を理解し、展開していた。こういった人材がmedia exprimoの対象とするミュージアムなどに存在すると、media exprimoの広がりに大きな役割を果たすと考えられる。
以前石炭産業が盛んであり、現在新らしい産業の柱を探しているところは、夕張と似ている。夕張でのDigital Storytellingは面白いか?

